アイアンマンジャパン参戦記(draft)

「ハワイ獲得」なんて無茶な目標を言って…

年始の目標に「ハワイ獲得」と言った手前、ハワイを狙う人らしい練習をしないと、と思ったのですが…寒いのが苦手だったり仕事が忙しすぎたり色々あったりしてフィジカル的にもメンタル的にもマトモな練習が出来ず、正直3月初めまでは「こんなんじゃ無理だ」と自信喪失していました。俺は口ばっかり野郎になってしまうのか…とかなりヘコんでいました。
しかし3月からの積み重ねで少しづつ復活してきて、最終的には我ながらいい状態に仕上がったと思います。特にGWのM合宿と次の週休暇を取っての自主練習。すごく実りある2週間でした。ありがとうございました。
東京を出る直前に最終調整で27インチの方で走ったのですが、こちらでもいい走りが出来ていたので「これなら上位入りが狙える」「バイクパートをうまくこなせたらハワイも夢じゃない?」という手ごたえを感じていました。

今回の目標はswim 1h/bike 5h30min/run 3h30min。去年のカテゴリCの上位5位は全員10時間を切っていたので、これを目標にしました。
bike runともこれくらいのペースを守りきれればいける、という目安を練習の中で作り、それを本番で出せればそれでいいと思いました。

スイム

今回はスイム出身の意地で、スイムを50位以内で上がりたい、と思っていました。
今年のスタートはエリートとエイジで2分差を開けられ、2回ホーンが鳴らされたのですが、エイジスタートのときはタイミングを逸した感じになり混雑に巻き込まれました。しかし1周回目前半でバトルが無くなり、自分がいいペースで泳げていることがすぐにわかりました。
久しぶりのウェットは呼吸がつらい。思うように息ができていないことが心配になりました。いい加減ウェットスーツは作り直さないといけないか?足回りなどずいぶんサイズが合わなくなってるし、また脱いだときに破いてしまったので…
ラスト800m辺りで横並びに泳いでいる3人組に前を阻まれました。どこか間に入りたいのに入れない。横から回り込もうとしたらブロックされる。こんなことってあり?いいペースではあったけど余裕はあったので上に乗っかってでも抜くべきだったか。結果ラップは65位。あと数秒で50位に入れただけに残念な立ち上がりでした。

1:06:22(65位)

バイク前半

今回は雨の予報が無かったものの気温が下がる予報だったので、上だけバイクウェアに着替えアームウォーマーを手首に巻いてスタートしました。バイクに乗った段階でave 34km/hを目標に踏んでいきました。押せるところは押していき、上りで大減速しない。
確かに風はそこそこ強く時々軽い霧雨が振ったりしたものの、最初の3時間の段階で目標の速度は維持できて集中力も残っていたので、これはいける!と思いました。

そう、玉之浦の辺りまでは…

4:02:16(71位)

バイク後半

玉之浦の平地でDHポジションを維持しながら淡々とpushしていると、ふっと意識がなくなる瞬間を感じ、嫌な予感が頭をよぎりました。しばらく走っていると、やはりボーッとなってしまう瞬間がある。
3回くらい意識を失いかけた辺りで低血糖症を確信しました。1時間毎の補給食は欠かしていなかったので、インシュリンショックによるものでしょうか?
インシュリンショックが、急激に血糖値が上がる→急激にインシュリンが沸く→血糖値が急激に下がるというのは知っていたのですが、じゃあどう対策すればいいのかわからなかった。後から血糖値を上げるように補給すればいいというのを知ったのですが、その時の私は逆に水だけをひたすら飲んで、補給を完全に止めていました。

そしてその集中力の途切れた状態で、ジャパン最大の勝負どころである周回コースへ…

もう私にできることは、上りでギアを落としシッティングで粘ること、下りでカーブのところでだけ集中すること。最終周回ではもう真っ直ぐにすら走っていません。キツイとかラクとかいう感情じゃなくて、とにかく眠い!止まってその場で眠りたい!何度もそう思いました。

そして虚ろな状態のまま周回コース最後の坂を終えてしまいました。もう何人に抜かれたんだろう?
周回コース最後のエイドで、目を覚ますために一番味の濃い梅干をわしづかみにして全部食べ、種を奥歯でかみ締めながら眠気を堪え、福江に向かいました。この途中で時計は7時間超え。目標を大幅に下回ります。

「ああ、俺のジャパンは終わった…」どのツラ下げて走ればいいんだろう?勝負に乗れなくなったエリートが途中でレースを止める、というのをよく聞きますが、この時ばかりはそのエリート選手の気持ちが解るような気がしました。

7:22:17(119位)

ラン前半

傷心のままランのテントに入りトランジッションバッグを開けると中には暑さの保険のために入れていたランウェア。既に着替える元気も無かったのでそのままバイクウェアで走ろうと決めたのですが、その時「いや!今年のカテゴリCはどう転ぶかわからない!」と思い直し、3時間半の走りをしようと心に決めました。
走り始めは全く脚のダメージが無く、これならキロ5分行けると確信。直前のトレッドミルで「これくらいの踏み込みで時速何km」というのを身体に覚えこませていたので、タレはじめた時でも我慢が効き、速度を維持することができました。

補給はスタート直後にパワージェルを一本。そしてエイドを2kmごとに使用。コーラ+CCD、胃がもたれている時にはオレンジで補給していきました。

そして最初の1周回で2時間を大幅に切るタイムで通過!これはひょっとしてひょっとしないか?と思い始めます。

9:15:35(106位)

ラン後半

ラン後半に入ったところで「ゆぴの分も頑張れ!」という見たことのある名前が書いてある応援ボードを発見。一瞬事態が飲み込めなかったのですが、下を見ると自分の番号があったので「本物だ!」と確信。どこのチームの誰なのかわからなかったけどすごく嬉しくて、渾身の両手thumb upで応えました。

その先でVEのメンバーの方からミミさんが6分先にいることを教えてもらい、慌てず10km先で追いつこうとpushを継続。そして予定通りの距離の辺りでミミさんを発見!そこからパスすることができなかったのですが、無理な速度ではなかったので並走を続けます。

しかし数km走ってるうちに後ろからミミさんのカテゴリのライバル児島幸選手登場!すごい勢いでパスされました。ここで私がトイレに行きたくなったので、ミミさん達の勝負の邪魔をしないついでにトイレ休憩。ミミさんとは100m位差がついてしまい、この差は最後まで縮めることはできませんでした。

ラスト5km地点で前方にカテゴリCの選手を発見。平地ではいいペースで走っているものの、上りでは明らかに脚が止まっていたので、これはいける!と最後の食い所を41km地点に。予定通り最後の上り坂で差を縮め、そっと後ろにつきます。しかしその辺りで遠くからウィットさんのMCが聞こえ思わず反応してパスしてしまい、ラスト1kmのロングスパートに。1kmは隙を見せたらカウンター食らう!と渾身のダッシュ石田城に向かいました。
最後のお堀の橋を渡るところで恐る恐る後ろを確認し、スパートが決まったことを確認。応援の人達から「11時間切れるぞ!」という言葉を聞き心強かったです。

サブテンには遠く及ばないけど、初の11時間切り。前回タイムを20分更新。そしてバイク後半以外はほぼ思ったとおりのレース展開ができたことがすごく嬉しくて、観客席を指差してアピール!&ガッツポーズ!ゆぴボードでやった両手thumb upでゴール!もう何でもありですな。

10:58:30(95位/カテゴリ別13位)

今回の反省点と今後のこと

結果としては、ハワイは口先ばかりの結果に終わってしまいました。カテゴリ別5位とは約45分差。ハワイはかくも遠いものです…でも価値のあるレースは出来たと思います。

2回目のアイアンマン参加は、リラックスしすぎて気が緩んでたかなと思いました。福江に入ってから、去年やっていたような慎重なコンディション作りが出来ていなかったのかもしれない。特に当日バイクシューズを宿に忘れるなんてありえませんよね…宿が富江でよかった…

今回の失敗のすべては、バイク後半の低血糖症でした。寝そうになりながら坂を下るなんてすごく危ないので絶対真似しないでください。
もっと言えばバイクの経験不足だと思います。過去の通勤ライドや練習の中でハンガーノック・脱水症・熱中症・各種メカトラといろんなトラブルを経験していたつもりが、やっぱりまだまだ甘かったということです。


バイクで集中力を切らさず走り切っていたら…とも思いますが、しかしそういう走りをしていたらランは潰れてたんじゃないか?という疑問もあります。今回のようなサラ脚のタイムの10分落ちなんていう奇跡的なランタイムは出せなかったかもしれない。結局自分の実力はよくわからないままジャパンは終わってしまいました。

…現在コリア出場を考えています。ハワイスロットが欲しいんじゃなくて、自分がハワイを取れる器なのかをチェジュで試してみたい。しかしディスク買ってアイアンマン予算は赤字気味だし…1週間ほど悩ませてください。